2014年7月2日水曜日

ニホンザルの赤ちゃん人工哺育記(前編)

現在、動物園内のサル山には38頭のニホンザルが生活しています。
そのうち、4頭は今年生まれの赤ちゃんです。

昨年生まれのこどもも4頭いて、サル山を覗くと小さな赤ちゃんたちが
たくさんいて動き回り、見ていて微笑ましいです。


5月18日の朝。

開園前にサル山に行くと…1頭の赤ちゃんサルがいました。

ところが、そばにお母さんはいません。
赤ちゃんは小さな体で目一杯鳴き声をあげています。まだへその緒もついています。

お母さんは歩き方やお尻の出血からすぐにわかりましたが全く近づく気配もありません。
そこで…人工哺育を始めることにしました。


体重を測ってみると、なんと600gもある男の子でした。
生まれてすぐの赤ちゃんの体重は大体500gですから、なかなか立派な子です。

お母さんからおそらく初乳ももらっていないでしょうから、
さっそくミルクをあげてみましたが…


なかなか上手に飲めません。



ちなみに哺乳瓶はネコ用の乳首を使っていますが、ミルクは人間と同じものです。


とにかく、ミルクを飲んでくれないことには死んでしまうので、数時間おきにミルクを与えます。


2日目(5月19日)。

体重は533gまで減っていました。
とはいえ、元気はあってうんちもおしっこもしっかりしています。


1回のミルクに1時間近くかかってしまいますが、1滴ずつでも飲ませていきます。


夜はタオルにくるまって静かにしてくれています。



4日目(5月21日)。

へその緒が取れました。
ミルクも1回に10g以上飲んでくれるようになりました。

しかし、体重は506gと増える気配がありません。


6日目(5月23日)。

うんちをするたびに周りが汚れて大変なので、
おむつを付けることにしました。

おむつはペットシーツを切って即席で作りました。




7日目(5月24日)。

とうとう体重が502gにまで減りました。
赤ちゃん自身はとっても元気なんです…なんせ体重が増えない。



こうしてニホンザルの赤ちゃんを育てていますが、
はたしてこの子をどうするのかという答えが出ずにいました。


というのも、ニホンザルは群れで生活している動物です。
それは動物園でも同じで、掃除をしたり、ごはんを与えたりはしますが
基本的には何も手出しはしません。出産も育児もサル任せです。


ケガや病気の時は獣医さんと相談してどうするかを決めます。
捕まえて、麻酔をかけて治療するのは簡単です。

しかし、治療後にサル山に戻すと…
そのサルは一度群れから離れ、違う匂いをまとって帰ってきますから、新参者扱いになります。

他のサルたちから一斉にいじめられて、もっと大けがを負ったりすることもあるのです。
なので、ちょっとしたことでは捕まえて治療したりはしません。

そんな状況の中で、人工哺育で育ったサルが群れに帰るのはかなり難しいことなのです。
特にオスは無理だとされています。

他の動物園では成功例もないわけではないのですが、
色々好条件が重なったりした面もあるでしょう。

サルは社会性を持った動物です。それぞれの群れのルールがあります。
赤ちゃんサルは成長の過程で、母やその他のサルに色んなルールを教えてもらって育ちます。

しかし人の手で育ったサルは、サル社会のルールを知りません。



しかも離乳までかなり時間がかかるので、
「育児は人間で、教育はサル」というわけには、なかなかいかないのです。

しかし…せっかく生まれてきた命。
どこかもらってくれるところはないか探してみることにしました。

続きは後編へ!