ツキノワグマ舎のクマ棚

ツキノワグマの獣舎をお引越しして約2年。
段差や緑が多い運動場になり、オスのゲンキ、メスのハナコ、
二頭とも運動量が増え、個体差はありますが、動きも活発になりました。


こちらがお引越し当初のゲンキです。
櫓に登るのも、よっこらせ、といった様子でした。
現在のゲンキ。
こんな感じです。
動きが活発になるとともにスリムになりました。
そして獣舎にもおもしろい変化がうまれました。
なんと「クマ棚」ができているではありませんか。
木の枝々に鳥の巣のようなものができているのがわかりますか?
10月頃、実りある時期はこういう状態でした。
現在は木の枝も選定され、青葉もなくなり、
よりクマ棚だとわかりやすくなっています。
こう見えて、ツキノワグマはとても身軽。
木などの高い場所に登るのが得意です。

そして木の実や果実などを好みます。
ゲンキも木に登って、枝先の小さな実を
自分の方へ手繰り寄せては必死になって食べていたのです。
(写真は、ひっかかった青草をたべるために木登りをしてるところです)

このようにツキノワグマが
エサを自分の方へと手繰り寄せながら採食することで、
折った枝葉が集まりクマ棚を作ります。

とは言えここは動物園の展示場。
ゲンキがこうして木登りをするようになるまでに、
様々な試みをしてきました。

まずは食いしん坊のゲンキの食事時間を長くすることで、
いろんな動きを引き出そうと、フィーダー(給餌器)を使用しました。
フィーダーとして、ブイ(浮袋)や、消防ホースにエサを仕込んで与えます。
ちなみに、この時はゲンキの誕生日が近かったので、
フィーダの中身を豪華にしてます(笑)
突き刺さっていた青草は、あっという間に食べちゃいましたが、
ブイの中にはまだエサがあります。
転がしては、小さな穴から落ちてくるエサをもぐもぐ…。

自分でブイを上手に動かし、エサを手に入れるゲンキ♪

ほかにも、獣舎のあちこちにエサをまいたりしました。
この時は、飼育員が青草を丸めて、
獣舎の色々な場所へと投げ入れたり、木にひっかけたり…。
あちこちに散らばったエサは、嗅覚を駆使して探すようになりました。
そんな日常を過ごす中、昨年の秋にゲンキが木に初めて登りました。
木に登っては実を食べ、
器用に降りては、地面に落ちた実を食べていたのです。
その結果の「クマ棚」だったのです。

このように動物本来の行動を引き出す環境を作り、
動物が健康で幸福に暮らせるように工夫することを
「環境エンリッチメント」と言います。

飼育下では環境が限られているため、
こうしたクマ棚をみること自体がとても珍しいこと。

また野生のツキノワグマは、
九州地方では絶滅したと言われているので、
自然の中でも見つけることは難しいのではないかと思います。

ずいぶんと朽ちていますが、クマ棚はまだありますので、
ご来園の際には、ぜひ観察してみてくださいね。

(ハナコのお話しはまた次回にしたいと思います)

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