オランウータンの健康管理~💉採血編
当園ではリキ♂とナナ♀、2頭のボルネオオランウータンを飼育しています。
(2024年12月頃のリキ)
2025年8月、リキは採血ができるようになりました。
コツコツとハズバンダリートレーニングを行うこと約1か月。
失敗もありましたが、いつものことながら協力的なリキのおかげです。
失敗もありましたが、いつものことながら協力的なリキのおかげです。
というわけで、オランウータンのリキ、採血成功までの道のりをお伝えしたいと思います。
<はじめに・・・>
動物園で飼育している野生動物の健康管理ってどうしていると思いますか?人間のように検診があるわけでも、ペットのように専門の病院もない動物園の野生動物たち。
しかし、私たち人間も含め、生き物は歳を重ねれば確実に健康状態は低下します。
特に野生動物は、弱みとなる不調をなかなか見せてくれません。
そこで、毎日接する飼育員たちが健康管理を行う必要が出てきます。
キリン(ジュラ♂)の採血トレーニングの様子。

コツメカワウソ(ふく太♂)のレントゲンの様子。

このようにコツメカワウソのような小さな生き物から、
ゾウのような大型獣、首が長~いキリンや角が大きなサイ、などなど・・・大きさも形状も様々な動物たち相手の健康管理は紆余曲折、論文を漁ったり、各動物園と情報交換したり・・・
ついつい愚痴っぽくなりそうなので、そろそろ本題にw
というわけで!
というわけで!
どこかの誰かの役に立てればと思い、備忘録を残します。
<ハズバンダリートレーニングとは>
ハズバンダリートレーニング(英:husbandry training):受診動作訓練動物の健康管理に関わるトレーニングのこと。
動物に協力してもらえるようにトレーニングすることで、動物たちの心身にかかる負担が軽減します。
動物に協力してもらえるようにトレーニングすることで、動物たちの心身にかかる負担が軽減します。
・・・というのがだいたい一般的な説明です。

オランウータンのナナ♀、口を開けるトレーニング中
しかし、実際の飼育現場では、種により、また個体による性質や性格、獣舎環境等々により、スムーズにいくこともあれば、難航することも・・・。
基本となるのは、やはり飼育員による日々の観察でしょうか。
基本となるのは、やはり飼育員による日々の観察でしょうか。
<獣舎環境>
元々、オランウータンの獣舎には採血を行えるような設備はありませんでした。そこで職員による、細かい要望を取り入れたオーダーメイドにて、以下の物を制作、設置してもらいました。
動物園には飼育員や獣医師以外にも様々な人が働いています。
当園には園路や獣舎をメンテナンスする係があり、今回はその職員たちに器具の制作を依頼したのです。

採血器具設置前の獣舎。

そこにオランウータンの腕が入るように採血口を作ってもらいました。



採血口は着脱式になっており、取り付けるとこんな具合になります。

ちなみにこのキリンと人間を仕切る足場のようなトレーニング環境や

ヤギの木製の台、
モルモットの通路なども職員が製作したもの。
基本的にオーダーメイド品なんです。すごかろ?
<いよいよ採血トレーニング開始>
▼条件
・オランウータン担当飼育員が揃っている時のみ実施(週1~2日)
・できる日は1日、1~2回トレーニング
・ナナが発情している時は、リキも落ち着かないので控える

・ナナが発情している時は、リキも落ち着かないので控える

▼2025年6月9日
採血トレーニング開始 → 一か月ほどで本番
(間にナナの発情がありトレーニングを控える期間あり)
採血口に手を入れ、針がさせるようにリキ自ら腕を固定してもらう。
ちなみに獣舎の環境が変わると、多少は警戒するもんですが、リキはすぐに慣れてくれました。

ちなみに獣舎の環境が変わると、多少は警戒するもんですが、リキはすぐに慣れてくれました。


▼2025年7月15日
18回目に本番 → 本番失敗しかし、失敗した後も腕を差し出てくれました。
なんと協力的なリキでしょう。

▼2025年7月28日
24回目 → 本番二回目成功!前回のこともあり針を細くする。

採血ができると、体調管理の幅がぐ~んと広がります。
しかし人間でもいや~な注射針です。
しかし人間でもいや~な注射針です。
施設係の匠の技✨、獣医師の採血技術💉、飼育員の意地w、
そしてリキの頑張り💪が揃って、採血成功に辿り着きました!!
そしてリキの頑張り💪が揃って、採血成功に辿り着きました!!
つまりは、皆の協力が必要不可欠なハズバンダリートレーニングなのです!


(2025年9月頃のリキ。フランジがだんだんと立派になってますね)
ちなみにリキの健康状態は良好でした!
これからも健康維持、がんばろうね!
これからも健康維持、がんばろうね!