野生動物の保全と保護の違いって?

 5月第2土曜日は「世界ビントロングの日」、また5月16日は「世界マレーグマの日」でした。
動物種は違いますが、共通点の多い二種を中心に少し真面目な話をします。
「世界ビントロングの日(World Binturong Day)」は、フランスの団体「Arctictis Binturong Conservation」が、ビントロングの理解と保全を目的として、毎年5月の第2土曜日を世界ビントロングの日として制定。
「世界マレーグマの日(International Sun Bear Day)は、
2015年5月16日にボルネオ島マレーシア領サバ州にあるボルネオマレーグマ保護センターが保護個体を初めて野生復帰することができたことに由来。

<ビントロング>
主にインド北東部や東南アジアなどの森林に棲むジャコウネコの仲間。
別名「クマネコ」と呼ばれ、クマのような顔と、太くて長いしっぽが特長的な珍しい動物です。
ジャコウネコ科特有の体臭が独特で、ポップコーンやココナッツという表現をされます。

当園には3頭のビントロングがいます。
 
左:トロン、右:ビーン。この2頭は広い展示室にいます。

写真の2頭のうち、体の小さい方がオスの「ビーン」21歳です。
ビーンは高齢ということもあり、寒さが苦手で寝室から出たがらず、飼育員泣かせな一面も。

メスはトロン16歳とルビー5歳がいます。
よくガイドで登場するのがこのトロンです。

トロンはとても人慣れしていて、飼育員を実のなる木とでも思っているのか、肩に乗るのが大好きです。
ルビーは2021年11月29日に、愛媛県立とべ動物園より来園しました。
ビーンとトロンのひ孫ということもあり、別棟で生活しています。


<マレーグマ>
8種類のクマの中で世界最小、手足は大きく長い爪を持っています。
↑マチの鋭い爪

ビントロング同様に、東南アジアの森林に住み、夜行性。
雑食性で果物を好み、小さな虫も食べます。
クマですが冬眠はしません。
野生下での生息数や生態等、調査研究が進んでおらず、わからないことが多い動物でもあります。

当園には2頭のマレーグマがいます。
サニー♂
オスのサニーは食いしん坊な割にすぐそばのエサに気づかなかったりと、少しおっちょこちょいな一面があります。
マチ♀
メスのマチはちょっと短気で、エサを見えずらい場所までもっていって食べたりと、独占欲の強い一面があります。
サニーとマチは仲が良く、同居時にはよりそって昼寝しています。

個性的で魅力的なこの2種類は、ともに
「IUCNレッドリスト VU」=「絶滅危惧II類(VU)」になっています。
これは「近い将来に絶滅する可能性が高い種」ということです。

原因は生息地の破壊や乱獲など、多くの問題が絡み合っていますが、その全てが人間によるものであり、たいていは人間の経済活動に起因します。
そのひとつにパーム油プランテーション(輸出用の作物を栽培する為の大規模農園)があります。
農園を作るため、動物たちの暮らす森林は伐採によりどんどん減っています。
ビントロングは樹上で生活します。
森林が無いと、身を隠す場所も、寝床も食べ物も無くなります。

 
あるいは珍しいペットとして幼獣を捕獲するためだったり、漢方薬の原料として乱獲されたりという悲しい現実があります。
野生動物をこうした安易な消費行動へと巻き込むことで、彼らの未来は簡単に潰えてしまいます。

では何がどう彼らを守ることになるのでしょうか。

そんな時によく目にするのは、動物たちの保全や保護。
絶滅の危険にある動物や、その生息地を保護し、多様な生物を守る活動として良く目にする言葉です。
ではその「保全」や「保護」の違いはなんでしょうか?
 
 まずは保護すること。
保護(protection)とは自然のままの状態を維持し守ること。
動物の直接的な保護(捕獲や虐待の禁止、保護施設の整備など)や、絶滅危惧種保護のための、現地での保護活動など、動物の生存を支援する活動を指します。
そして保全。
保全(conservation)とは、生物が生存できる環境を維持する活動全般を指します。
私たち人間が積極的に関わっていくことで守っていくこと。
例えば、動物たちの現状を調べ、話題にし広めるだけでも保全につながります。
ガイドの時に配った観察シート

今回のように「動物の日」は、この保全を目的とし、皆さんに知ってもらうことがファーストステップとなります。
何より、知った後の自身の行動が緩やかにでも変化することが大切です。

例えば、森林伐採を止めるために、割り箸は環境に配慮したものを使う、マイ箸を持ち歩く、なども積極的な保全になります。
ここまで読み進めてくださっただけで、あなたはもう動物の保全に関わっています。
(ありがとうございます)

まずは身近な動物園で野生動物たちを知る、興味を持つことも「保全」の第一歩、ぜひ当園のビントロングやマレーグマに会いに来てください。
日曜、祝日には「ZOOスポットガイド」という、様々な動物のガイドも開催しています。

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